介護職員の給与アップを目的に導入された処遇改善加算制度は、介護現場で働く職員の待遇改善に大いに貢献しています。しかし、介護現場で中心的な役割を果たすリーダー格の介護職員の待遇改善も喫緊の課題です。介護のノウハウを熟知したベテラン職員が定着しないと、介護職員が補充されたところで育成することは難しいもの。そのような問題を受け、リーダーの役割を担う介護職員の給与アップを図るべく、特定処遇改善加算制度が導入されました。
これにより、勤続年数10年以上の介護福祉士などベテランの介護職員の給与が、全産業の平均年収レベルまで引き上げられることになりました。リーダー格の給与が一定のレベルで確保されれば、定着率も上がると考えられたのです。ところが、これまでの待遇の悪さから介護職員の離職率は極めて高く、長期間勤務を継続してきた介護職員があまり多くないのです。したがって、10年以上の勤続年数のある介護福祉士という特定処遇改善加算の対象者を探す方が難しいと言われています。
リーダー格の介護職員を救済するため立ち上げられた制度ですが、肝心の救済相手が少ないのが現状。また、勤続年数の計算方法についても、起算点の認定が各事業所の管理者に任されているため、恣意的に操作されるおそれがあります。つまり、本来受給すべき職員には支給されず、管理者の好みによって受給対象者を決められてしまう懸念があるのです。更に言うと、全職員の給与アップを図る処遇改善加算とは異なり、特定処遇改善加算に関しては一部の対象者のみの待遇を改善し差別化を図るもの。適用を誤ると職場の雰囲気が悪くなるという懸念もあるようです。
介護業界は、身体介護に必要な肉体労働に加えて、給与面で待遇が良くないという状況が続き、慢性的な人材不足に悩まされてきました。そこで、介護職員の給与面において待遇改善を図るため、処遇改善加算という制度が導入されました。この処遇改善加算とは、職員のキャリアアップにつながるシステムを構築し、さらに職場環境の改善計画を立てた事業所が行政機関に請求することで介護報酬に上乗せされて支給されるというものです。処遇改善加算により支給されたお金は、全額が非常勤や派遣社員を含めた全ての介護職員の給与に充てなければなりません。したがって、事業所の所長や理事長には分配されてはならないことになっているのです。事業所が処遇改善加算について実績報告書を行政機関に提出することを義務付け、該当者以外への支給といった不正を防止しています。
この制度のおかげで介護職員の給与は上がり続けることになり、全国平均では介護職員の月給が4年間に20000円以上も上がったという報告もあるようです。もちろん、事業所が行政機関に請求しなければ処遇改善加算は支給されませんが、実際には介護事業所の90パーセント以上が処遇改善加算を取得しています。
ただし、請求したからといって全ての事業所が同額の処遇改善加算が支給されるわけではありません。行政機関から提示された職場改善項目の充足状況により給付額は異なります。したがって、より多くの改善項目を充たした事業所ほど高額の処遇改善加算を受給できるというわけです。更には、特定処遇改善加算という制度が導入され、実務経験豊富なベテラン介護福祉士などの給与アップが見込めるようになりました。